坂本千代の著書

-坂本千代・加藤由紀『ジョルジュ・サンドと四人の音楽家  リスト、ベルリオーズ、マイヤベーア、ショパン』彩流社、2013年刊

 サンドと19世紀を代表する4人の音楽家の出会いと交流やそこから生まれた作品についての研究。また、サンドの書いたものをとおして彼らの人物像や作品を浮かびあがらせ、彼女が作品中で表明した 「音楽こそが最高の芸術である」という思想を再検討している。サンドに関する部分を坂本、音楽家に関する部分を加藤がまず執筆したあと、二人で加筆修正を重ねて最終形態を作りあげた本である。

-日本ジョルジュ・サンド学会編『200年目のジョルジュ・サンド 解釈の最先端と受容史』(坂本千代他11名による共著)新評論、2012年刊 
  第2部第2章「音楽の力・芸術の自由 コンシュエロの放浪とアドリアニのユートピア」を担当。また、本書後半部分の「受容の歴史 ジョルジュ・サンドと日本」を他の4人とともに執筆している。

日本ジョルジュ・サンド学会編『LES HERITAGES DE GEORGE SAND AUX XXe ET XXIe SIECLES』(坂本千代他14名による共著)慶應義塾大学出版会、2006年刊 
  「20・21世紀へのジョルジュ・サンドの遺産」という題名の仏語論文集(著者15名のうち、9名が日本人)。9番目が坂本千代の論文「Mozart dans l’oeuvre de George Sand」。サンドの自伝『我が生涯の記』、小説『デゼルトの城』、劇作『ファヴィラ先生』に見られるモーツァルトのイメージを検討することによって、サ ンドの芸術観がどのようなものであったかを論じている。

『マリー・ダグー 19世紀フランス 伯爵夫人の孤独と熱情』春風社、2005年刊 
  2005年はマリー・ダグー伯爵夫人生誕200年目にあたる。富と知性に恵まれた金髪美人。年下の音楽家フランツ・リストと駆け落ちして3人の子供を 生んだ女性。彼との生活が破綻したあと、作家・ジャーナリストのダニエル・ステルンとして活躍したサロンの女王。これが現代に残る彼女のイメージである。 実際のマリー・ダグーは、貴族階級の偏見を乗り越え、のちには鬱病という障害を抱えつつも自分のうちにある可能性を最大限に追求し,音楽や絵画などの芸術 から政治・社会の問題まで真摯に分析・考察し理解しようとした、当時一級の知識人であった。本書は、彼女の主著『1848年革命史』を中心に据えてその思 想を詳しく検討するとともに、彼女の手記や手紙、リストやジョルジュ・サンドなど彼女とかかわった人々の書いたものを手がかりにしてマリー・ダグーの生の 軌跡を追っている。リストの恋人としてだけではなく、フランス二月革命に関する優れた歴史書の著者としての彼女の生涯をぜひ多くの人に知ってもらいたいと いう気持ちが数年前から私の中で大きくふくれあがり、それがひとつの形をとったのがこの本である。

『ジョルジュ・サンドの世界』(坂本千代他7名による共著)第三書房、2003年刊 
  2004年のサンド生誕200年記念出版。坂本は序章(ジョルジュ・サンドの生涯と作品)および第3部第1章(『マドモワゼル・メルケム』に見る理想の女性像 ー 35年後のサンド流ユートピア)を担当している。
  第3部第1章はサンドのデビュー作『アンディヤナ』(1832年)と比較しながら、1867年執筆の『マドモワゼル・メルケム』を「恋愛」「結婚」「女子教育」「母性」という4つのトピックに分けて分析している。

『INTERPRETATIONS ROMANTIQUES DE JEANNE D’ARC』Presses Universitaires du Septentrion(フランス)、1997年刊 
  題名の和訳は「ジャンヌ・ダルクのロマン主義的解釈」。リヨン第2大学提出の博士論文を出版したもの。15世紀フランスの救国のヒロインであったジャンヌ・ダルクの生涯と伝説が19世紀ロマン主義の時代にどのように解釈され、どのような形で後の時代に影響をおよぼしたかを詳細に考察していく。
   全体は3部構成である。第1部はジャンヌ解釈における歴史的・社会的側面を取り扱う。まず、ジュール・ミシュレの描く「フランス民衆のシンボル」として のジャンヌ、ついで、サンドの小説『ジャンヌ』における「農民としてのジャンヌ」を詳しく見たあと、ルナン、キネ、アンリ・マルタンの著作中に見られる 「ケルト的ジャンヌ」を分析する。第2部はジャンヌ解釈の宗教的側面について論じている。最初に『19世紀ラルース百科事典』中のジャンヌの項、ラヴィス の『フランス史』およびミシュレを比較し、ついで、サンドの作品中の「異教徒ジャンヌ」を考察する。第3部は19世紀における「女性」のイメージのミス ティックな側面の研究である。まず、ジャンヌ伝説とマリア信仰の関係、次にロマン派の作品におけるジェンダーの問題を扱ったあと、フランスでの女性メシア 論の展開について検討している。

『ジョルジュ・サンド』清水書院、「人と思想」シリーズ、1997年刊

  ジョルジュ・サンドの生涯とおもな作品を紹介しつつ、それらの現代的な意味について考える。
   全体は4部からなっている。第1部でオーロール・デュドヴァンがジョルジュ・サンドとなるまでを解説したあと、第2部では1837年頃までの彼女の生活 と作品を扱う。特にここではサンドの有名な男装について考察する。第3部では二月革命頃までのサンドと彼女を取り巻く人々、音楽家リストや女性作家ダニエ ル・ステルンとの交流、当時の女権運動家たちとサンドの女性論の相違に注目している。第4部はサンドの晩年の作品および劇作を分析するとともに、「ロマン 派世代として」「女流作家として」そして「フランス文学の作家として」の彼女を考察したあと、最後に日本におけるサンドの作品の翻訳と受け入れの歴史を概 観している。 

『愛と革命ージョルジュ・サンド伝』筑摩書房、ちくまプリマーブックス、1992年刊

  ジョルジュ・サンドの生涯と膨大な作品について、おもに彼女が作家として自立していく過程および二月革命との関わりに重点を置いて解説している。
   サンドの作家としての成熟はまた人間としての成熟であった。ショパンのような芸術家や、医者、政治家などさまざまな仕事を持つ人々とつきあうにつれ、彼 女の目は労働者、農民、そして多くの女性たちの恵まれない生活に向けられるようになり、貧富の差と社会的不平等があまりにも大きい当時の社会(ルイ・フィ リップ王の七月王政)にたいする批判と改革への熱意を自分の作品に盛り込んでいったのであった。その頂点が『スピリディオン』『コンスエロ』『ルドルシュ タット伯爵夫人』であるといえよう。本書ではサンドのこの3つの小説を詳しく検討し、また当時のサンドの師であった社会思想家ピエール・ルルー、宗教家ラ ムネの影響等を分析する。
  本書は高校生くらいの年代の読者を想定して書かれている。