ジョルジュ・サンドはなぜ男装をしたか

『ジョルジュ・サンドはなぜ男装をしたか』池田孝江(平凡社、1988年刊)

  大革命前夜に始まり、サンドが生まれたナポレオン帝政期、さらには晩年である1870年代までのフランスの社会状況の解説を背景に、ジョルジュ・サン ドの生涯と作品が紹介されている。著者は服飾史の専門家で、モードに関する著作も多い。サンドが「なぜ男装をしたか」という興味に端を発して書かれた本書 は、その原因があると思われる幼少期について多く筆をさかれている。また、サンドが女性ながら作家として自立しようとする時期の葛藤、その時期に果たした 「男装」の役割、作品に与えた影響も詳しく述べられている。サンドの肖像画・デッサン画(男装をしているものも含め)や、当時のモード写真などもふんだん にちりばめられているので、具体的なイメージを思い描きながら19世紀の歴史、風俗とともにサンドの存在を理解することを助けてくれる。本書は、「男装」 についての考察に始まっているが、全体としてはむしろサンドの全生涯を評伝として表したものと捉えることが可能であり、作品の紹介も多いので、ジョル ジュ・サンド入門書として有効に活用することができるだろう。(文責 高岡尚子)