恩師のこと

 フランスでお世話になった指導教官(女性)が亡くなったことを、友人からの電話で知りました。留学した時に、学部生向けの講義と修士学生用のゼミで教えていただきました。学部の授業は受講者が大勢だったので、フランス語の聞き取り能力が不十分な私でも気楽だったのですが、修士のゼミは出席者がたった3名で、そのうち2名は日本人(私ともう一人の女子)、1名はフランス人女子学生という構成でした。19世紀フランスの宗教思想の話なのですが、私は(もう一人の日本人も)内容の20%も理解できなかったと思います。先生はもちろんそのことをご存じでしたが、レベルを落とすことなく毎回淡々と授業を進められたことが印象に残っています。この授業を受けて、このままフランスでフランス語の修士論文を書くのはとうてい無理だと悟った私は、日本に帰って修士号をとる決心をしたのでした。

 日本で修士課程を終え、博士課程中退で大学に就職したあと、再びフランスの先生に会いに行きました。先生は、日本で博士論文を執筆したいという私の願いを受け入れてくださいました。その後は毎年先生に会いに行き、また、論文のできあがった部分を送って添削していただくことを繰り返しました。なんとか仕上げることができた時は本当にうれしかったものです。

 ここ20年ほど、先生とはクリスマスカードのみのつながりで、その年に研究したことなどを私から簡単に報告していました。今年からそれがなくなります・・・。

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